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フォトエッセイコンテスト 第5回 「わが家のお仏壇物語」入選作品

佳作 「お仏間の温もり」 吉住佐知子(北海道・女性・45歳)

佳作 星 伸也

 我家のお仏壇は二階にあります。普段、寝る時以外は物を取りに行く程度で、あまり二階を使っていません。お仏間に入るのも朝のお供えの時ぐらいです。
 ただ、このお仏間が大好きな連中がいるのです。それは猫。三匹いるうちの一匹が器用に襖を開けて中に入り、残りの二匹もそれに続きます。
 買い物から帰り、靴を脱いでいると、ふんわりとお線香と畳の匂い漂ってきます。二階に上がると、案の定、襖が僅かに開いています。中を覗くとお仏壇の下や、時にはあろうことか、上にあがって寝ているのです。
「コラ! 何て罰当たりな!」
 怒鳴ってみても猫はあくびを返すだけ。急いで抱き上げ、廊下に追い出します。
 お仏間はいつも締め切っているので、猫にしてみれば静かで落ち着く場所なのでしょうが、お命日やお彼岸の時分にはお花を戴いたりします。ユリの花などは猫に悪いので入らないように特に気をつけていますが、いつもはしない花の香りが余計に興味をそそるらしく、そんな時ほど隙を見て侵入しています。
 お仏壇周りに飛び散った猫の毛を拭いながら、「散らかして申し訳ありません」と、義母の遺影に頭を下げる時、ふと思うことがあります。
 お義母さんは、いつもここで一人―。
 東向きのお仏間は午後には暗くなり、ひと気がない分余計に寂しげな雰囲気になってしまいます。だからと言って、ずっとその場にあったものを今さら動かすことは出来ません。夫も特に気にしていません。お義母さんを一人ぼっちにしているようで、何となく後ろめたいような気持ちに囚われてしまうのは、私がお仏壇のない家に生まれ育ったせいなのでしょうか。
 そんな時、猫がお仏間の座布団の上で丸くなっているのを見ると、少しほっとするような、安心するような気持ちになります。
 猫の寝ていた場所に手を添えると、そこがほんのりと温かいのです。
 お義母さんが寂しくないように、今日も猫はお仏間に忍び込んでいます。 

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