| クリスの目から見たお盆(2004年8月)
ハイ、僕の名前はクリス・マシュー。アメリカのシカゴからやってきた留学生です。
えっ? なぜ僕が日本に留学したかですか?小学生の時のクラスメートに日本人がいて、彼の家に遊びに行った時、彼のお母さんの美しさと、物腰の柔らかさ(この日本語はとてもビューティフルです)が僕の日本への憧れを生み出しました。そして僕は今、日本の地方都市に留学しています。
僕が寄宿しているのは「仏壇屋さん」です。はじめて仏壇を見たとき、とても、とても驚きました。ブラックボックスにゴールド。ベリーゴージャス。
お父さん、つまり仏壇屋さんのご主人は「そんなにゴージャスけ?」と言ってますが、こんなゴージャスなものを家の中に置いているのは、きっとヨーロッパの貴族だけです。
お父さんによれば、八月の中旬になると、お仏壇のある家にはご先祖様が帰ってくるそうです。OH、ファンタスティック。まるでアイルランドのフェアリーテール(妖精物語)のようです。レクサスとソニーの国にこんなファンタジーがあるなんて、僕は知りませんでした。
お盆の時にはエントランスで火を焚くそうです。その火はご先祖様がアナザワールド(あの世)から帰ってくる時の目印になるそうです。なんてエキサイティングなファンタジーなんでしょうか。ディズニーがこのスピリチュアルテール(精霊物語)を知っていたら、きっとそれをテーマにしたストーリーを考えたはずです。もし実現していたら、東京ディズニーランドにも「アンシスターズコート」(ご先祖様の館)が出来ていたかもしれませんね。でもディズニーはインディアンの話と混同したかもしれません。
その上、ご先祖様が帰ってくると、皆でご先祖様と一緒にご飯を食べて、昔話をするそうです。考えただけで、胸がドキドキします。僕もお盆の時には、お父さんのご先祖様に色々と話を聞きたいと思います。僕の専門は明治時代の日本文学ですから、ご先祖様の話は、僕の研究に役立つはずです。
お父さんは「最近のお客は信仰が薄くなった」とボヤイテいます。うーん、でも僕の目にはそう映りません。仏壇屋さんが読んでいる新聞によると二千万世帯以上が仏壇を持っているそうです。本当に信仰が薄いというのでしょうか?
その上、お正月には数千万人の人がお寺や神社にいって一年の願い事をするそうです。ムスリムはメッカに巡礼しますが、それさえ数十万人から百万人。日本の初詣は数千万人。僕はお父さんに、この初詣のことをギネスブックに「世界最大の宗教行事」として申請すようアドバイスしました。
今晩お父さんはユニオン(組合)に行くそうですが、もっと仏壇屋さんはプライドとコンフィデンス(自信)を持ってと僕は言いました。
あっ、お客様がいらしたようです。僕は店番もするようになりました。近所のオバアチャンに僕はとても人気があります。手を握って離さないオバアチャンもいます。みんないつか先祖になって、お盆に帰ってくるのでしょう。
「イラシャイマッセー、おばあちゃん」。では、また。
(※ノンフィクションです)
仏壇評論家・住田孝太郎
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