架空仏師を登場させたはせがわ(2005年6月)
 はせがわ(福岡)が渡邊明慶という架空の仏師の名前で仏像を販売したということが週刊ポスト(五月二十七日号)に掲載された。この点に関してはせがわはホームページ上などで次のように説明謝罪している。
『監修証に記載されております「渡辺明慶」は、実在しておりません。仕入開始時に弊社として確認すべきでありましたが、それを怠っておりました。また、同様のお位牌が約四十体ございます。
 販売開始当時、弊社といたしましては、松本明慶様を全く存じあげず、結果として紛らわしい販売となりましたこと、お詫び申しあげます。信用を第一として歩んで参りました弊社が、このような不祥事を起こしましたこと誠に申し訳なく、お求めいただいたお客様はもちろんのこと、社会の皆様、お取引先様、株主様に大変ご迷惑をおかけいたしましたこと心よりお詫び申しあげます。』
 なぜ「渡邊明慶」という架空の仏師の名前が登場したのだろうか。最も興味がもたれるのは、松久仏所で修業したという渡邊明慶という仏師を登場させたのは、誰かということだ。
 この仏像が登場した平成十一年当時、はせがわは松本明慶師を全く知らなかったと説明しているが、松本明慶師の仏像工房は当時から松久、江里の両仏所と並ぶ大きな工房であったことは間違いない。業界を代表する、そして上場企業でもあるはせがわが、松本明慶師の名前を知らなかったということは少し奇異に感じられる。
 加えて言えば、小紙では平成十一年以前に松本明慶師の執筆連載を行っており、それを読んで頂いてなかったことは大変残念でもある。
 今回の件に関して、小社は「仏像の供給元はなぜ渡邊明慶という実在しない仏師の名前を使ったのでしょうか?供給元はこの点に関して、どのように説明しているのでしょか?」という質問の他、二・三の質問をはせがわに送ったところ、次のような回答を寄せて頂いた。
「今回のお仏像販売に関しましての見解といたしましては、平成十七年五月十六日および平成十七年五月十九日に弊社のホームページ上に掲載させていただきました通りでございます。今後、弊社といたしましては、更なる品質管理の強化を優先しお客様からの信頼回復に努めてまいりたいと思っております」
 回答内容は当たり障りのないものであるが、少なくともどうしてこのような問題が起こったのか、その事実関係を明らかにすることが、上場企業としての責務ではないだろうか?
 さて、今回の件は、はせがわ一社だけの問題ではない。何かを表示して、製品の付加価値を高めるという観点で言えば、品質表示のあり方、産地表示のあり方も問題になる。
 品質表示、産地表示に関しては、様々な意見がある。小売店・メーカーともに自社の拠る立場により、意見は大きく異なるが、何かを表示することでお客様に誤認を与え、そのことがトラブルの原因となることは、多くの仏壇店が抱える問題であろう。
 国産表示に関しては全宗協が定めたルールもあるが、そのルールに沿えば「純国産」ではなく、「準国産(一部の部材などが海外製)」の製品も「国産」という表示になる。
 製品の多くが海外で製造されている今日、表示の問題、お客様に何をどのように伝えるのかという問題は、さらに深みにはまっているようにも見える。
 週刊ポストに掲載された記事は、はせがわのみならず、業界全体にも負のイメージを与えた。

仏壇評論家・住田孝太郎

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