沖縄の仏壇と檀家制度

 先日、日本トランスオーシャンに乗る機会があったが、その機内誌「Coralway(コーラルウェイ)」に興味深い特集「祈りと拝みの島 沖縄」が組まれていた。
 NHKの朝の連続ドラマで「ちゅらさん」では「おばぁ」こと古波蔵ハナさん(平良とみさん演じる)が沖縄的シャーマンを演じていた。「電話が掛かってくるよ」と予言すると、本当に電話が鳴るのだ。古波蔵家には仏壇があり、位牌がお祀りされていたことも思い出される。
 沖縄の仏壇には本尊祭祀が基本的にない。先祖祭祀としての仏壇がしっかりと根付き、そのことに対して誰も疑問を持たない(ようだ)。この特集を読んで初めて知ったのだが、檀家制度が沖縄には無いという。
「葬式や法事があると、あそこにお寺があったね、という感じでいちばん近い寺に頼む。家を引っ越せば移った先の寺に行くので、同じ家族なのに別々の宗派で法要をすることもまれではない。本土のような檀家制度が普及しなかったから宗派の違いに無頓着で、宗派が存在することを知らない人もいるという」
 今回の「祈りと拝みの島 沖縄」を書いた大竹昭子さんはこのように書く。加えて「仏壇があるから仏教だと結論づけると、つじつまが合わなくなる」とも言う。この事情は本土の仏壇も同じだ。
 初めて知ったことのもう一つは「ビンシー」。お寺やお墓に、さらには様々な祈りの場に欠かせない箱が「ビンシー」。
「かつ節削りの箱をちょっと大きくしたような木箱の中に徳利、線香、杯、米、塩などが入っている」
 写真を見ると廻し香炉よりも一回り大きな箱の中に、徳利、線香、杯、米、塩などが収められており、これが例えばお寺詣りの時に欠かせない道具であるという。
 寺に来るのはユタに言われて、という場合が多いそうだ。ユタことはシャーマン、祈祷者。「フリーランスの祈祷者」であるという。ユタが相談事を聞き判定を下すのだが、その多くは「御願不足」、つまり先祖への供養が足りないということになり、お寺に来て供養するというのだ。
 仏壇のことは「トートーメー」、漢字に置き換えれば「尊御前」だそうだ。ご先祖様のことを「ウヤファーフジ」と呼び、位牌のことも指す。
 沖縄の仏壇は位牌棚だ。仏壇の源流のひとつは「位牌棚」にある。このことは小紙「仏壇史」でも触れたことがあるが、柳田國男や梅原猛が日本文化の源流として沖縄に注目したことが、改めてよく分かるような気がする。
 檀家制度を持たない沖縄の祈りの習慣は、これからの業界のひとつの指標になるかもしれない。

仏壇評論家・住田孝太郎

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(2006年12月)